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一般講演 P3-073

徳島県阿南市大潟干潟におけるホソウミニナへの吸虫寄生率の潮位による変化

*遠野竜翁,大田直友,橋本温(阿南高専・建設),原田正和(香川大・医)

ホソウミニナは内湾の干潟や岩礁にすむ小型の巻き貝であり,北海道から南九州,韓国,中国にかけての広い地域に分布し,吸虫類の中間宿主となることが報告されている.Miura et al. (2005) が宮城県でホソウミニナへの吸虫感染による生活史特性への影響を実験・観察したところ,1.低潮位ほど殻長が大きい,2.低潮位で吸虫寄生率が高くなる,3.寄生された個体の体サイズが大きくなることが明らかになった.そこで,同様の現象を確認するため,徳島県阿南市大潟町(内湾の泥干潟に面した岩礁・転石海岸)でホソウミニナの吸虫寄生率が潮位によりどのように変化するか検証した. 2006年7月に調査地の岩礁でホソウミニナの分布を高潮位から低潮位まで確認したあと,分布の上・下の限界付近で54(上),52(下)個体のホソウミニナをランダムに採集した.上下の潮位差は約70cmであった.その後実験室で殻を割り吸虫の寄生を確認し,湿重量および軟体部重量を測定した.その結果,寄生率は圧倒的に下部で高く,3.7%(上),67.3%(下)であった.さらに,下部の体サイズは上部より大きいが,寄生の有無による体サイズの差はみられなかった.また,寄生により湿重量や軟体部重量に変化はみられなかった.Miura et al. (2005) の結果と比較すると,下部で寄生率が高く,大型個体が多いことは一致したが,寄生による大型化は観察されなかった.よって,今後の継続調査や標識再捕による潮位間移動についても検討する余地があると思われる.

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