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一般講演 P3-077

脊椎骨数の遺伝的変異と適応度成分との関係-シロウオ二型を用いた検討-

*小北智之, 高橋明香, 瀬戸雅文(福井県立大・生物資源)

魚類の脊椎骨数は種内集団間で異なることが珍しくなく、最大体長(pleomerism)や緯度(Jordan’s rule)と脊椎骨数の正の相関関係は古くから知られている現象である。しかし、魚類の計数形質は発生初期の環境条件(水温等)に影響されることも知られており、脊椎骨数の集団間変異における遺伝要因と環境要因の相対的寄与度についての知見は極めて限られている。また、このような変異の適応的意義についての検討もされているが、以前として不明な点も多い。本研究では、2つの地理的系統の間に固定された脊椎骨数変異が認められるシロウオを用いて、変異の遺伝性(様式)を明らかにするとともに脊椎骨数変異といくつかの適応度成分との関係を検討した。

シロウオには遺伝的に分化した日本海型と太平洋型が存在するが、日本海型は体サイズが大きく、脊椎骨数(変異は腹椎骨数に依存)が多いという特徴を持つ。日本海型と太平洋型の雌雄一対交配の結果、腹椎骨数は同型同士ともそれぞれの固有の表現型を発現したのに対して、F1ハイブリッドは正逆とも日本海型の表現型を発現した。このことは、日本海型形質が優性形質であることを示唆しており、実際2型の自然雑種群の中に日本海型/太平洋型対立遺伝子をヘテロで保有していると考えられる個体が存在することも交配実験から確認できた。また、発生初期の飼育水温を変化させても腹椎骨数は変化しなかった。さらに、2型の自然雑種群を用いた実験によって、胴部が長い日本海形質保有個体は雌の繁殖成功が高いことが、スタミナトンネル法によって、腹椎骨数/脊椎骨数比が個体の敏俊性に影響していることが明らかになった。以上の結果を踏まえ、シロウオ2型間の変異が適応的変異である可能性について議論したい。

日本生態学会