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一般講演 P3-078

植物の腺毛を利用するカスミカメムシ

*杉浦真治(森林総研), 山崎一夫(大阪市環科研)

植物の腺毛によって捕らえられた節足動物を摂食することで、特定の植物上でのみ生活する昆虫の生態について報告する。植物は、葉に棘や腺毛をもつことで、食害を減らす効果があることが知られている。ツツジ科の低木モチツツジRhododendron macrosepalumは、葉や茎、ガクに長く粘つく腺毛を持つ。さまざまなグループの昆虫類が腺毛に捕らえられ死んでしまう。京都市近郊の二次林で調査を行ったところ、腺毛はアブラムシなどの吸汁性の植食者に効果的だが、蛾類などの植食者にはあまり効果がない可能性が示唆された。一方、モチツツジカスミカメOrthotylus gotoi(カメムシ目カスミカメムシ科)は腺毛に捕らえられることなくモチツツジ上で生活していた。幼虫は4月下旬より出現し、成虫は6月上旬から羽化し8月上旬まで見られた。モチツツジ以外の植物上では観察されなかった。卵はモチツツジの当年枝に産み込まれ、来春まで休眠する。モチツツジカスミカメムシは腺毛に足をとられることなく、モチツツジ上を走り回ることができ、腺毛に捕らえられ死んでしまった節足動物に口吻を差し込んで摂食していた。野外での観察により、モチツツジカスミカメムシの幼虫、成虫とも、多様な節足動物の遺体を食物として利用していることがわかった。さらに、室内での飼育実験によって、モチツツジカスミカメムシ幼虫の発育、および成虫の生存には節足動物遺体の存在が必須であることがわかった。このように、モチツツジカスミカメは、腺毛によって捕らえられた節足動物類を主な餌として、モチツツジに強く依存している。

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