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一般講演 P3-082
Daphnia magnaは「こみ合う」と成長速度を低下させ、その分を再生産にまわし大型の子どもを産むことが明らかになっている。しかし、分子レベルでの研究は未だ報告されておらず,詳細は明らかになっていない。本研究では、D.magnaのこみ合い応答を細胞および分子レベルで明らかにすることを目的として,網羅的遺伝子発現解析を行った。
substractive hybridization法を用いてこみ合い環境下で発現が促進される遺伝子および抑制される遺伝子を網羅的にスクリーニングした。部分塩基配列を決定し、BLASTプログラムを用いてデータベース(DDBJ/EMBL/GenBank)上の既知遺伝子との相同性検索を行った結果、発現が促進されたクローンの187、抑制されたクローンの103が,既知遺伝子との高い相同性を示した。そのうち,こみ合い環境下において発現が促進された43クローンが,Drosophila melanogasterなどの既知のcuticla protain遺伝子と高い相同性を示した。このcuticla protain遺伝子ホモログの塩基配列を基に蛍光オリゴヌクレオチドプローブを作成し,D.magnaをwhole-mount fluorescence in situ hybridizatrion (FISH)法に供した。共焦点レーザー顕微鏡による観察の結果,こみ合い環境下で飼育されたD.magnaの消化管の周りで強く発現していることが明らかになった。さらに、呼吸活動に関わるチトクロム酸化酵素や雄性器遺伝子(Ralgps1)との相同性の高いクローンも,こみ合い区において強く発現していることも明らかとなり、これらの遺伝子はこみあい応答との関連が予測され、さらなる機能解析が必要であると考えられた。