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一般講演 P3-084

Ctenosciara japonica(クロバネキノコバエ科)の発生個体数の経年変化、季節消長、生活史 ―3年間の調査結果まとめ―

須島充昭(東大・総合文化)

演者は2002,2005,2006年度の3年間,横浜市内の調査地において多化性のクロバネキノコバエC. japonica Sutou & Itoの野生個体群の生態を調査し,昨年度の生態学会大会において概要を発表した。今年度は本種の発生個体数の変動と生活史に関する調査結果をまとめて報告する。

本種成虫を調査地において月に2回3年間,スイーピング法によって定量的に捕獲しその季節消長を調査したところ,5月,7月前半,8月後半にピークを示し,10月−12月にも小さなピークを0−2回示した。このように,季節消長には一定の傾向が認められたが,総捕獲個体数は2002年度348個体,2005年度1260個体,2006年度109個体と調査年度間で大きく変化した。特に2005年5月と7月に著しく個体数が増加し,翌8月から逆に急速に減少し,約1年間減少傾向が続いた後,2006年10月から再び増加傾向が続いている。この変化の一因が密度効果である可能性について考察したい。また,2005年5月,8月,2006年12月に,羽化直後の本種成虫を飼育し寿命を測定したところ,5月は雄平均2.0日 (n=13),雌平均2.7日 (n=15),8月は雄平均0.9日 (n=12),雌平均1.5日 (n=10),12月は雄平均2.4日 (n=13),雌平均2.7日 (n=11)であった。現在,以上の結果から,本種は調査地においては1年に4−5世代を経過するものと考えている。

本種の幼虫は土壌で腐植質を摂食しているが,同定が難しく,野外においてその発育状況を把握することは困難である。そこで演者らは,本種の幼虫と蛹の形態を記載し,同時に分子同定を可能にするためDNA barcodeを登録した (Sutou,Kato & Ito,投稿中)。

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