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一般講演 P3-086
奈良県と三重県の県境に位置する国指定大台ケ原鳥獣保護区の環境省所管地では、保護管理計画のもとにニホンジカの個体数調整が実施されている。関連する事業である植生回復事業の影響把握や、効率的な個体数調整方法検討の基礎情報とするため、この地域に生息するニホンジカにGPS首輪を用いて追跡を行い、季節移動についての検討を行った。2005年6月から2006年8月にかけて周辺地域に生息するニホンジカの成獣メス4個体にGPS首輪(LOTEK社製)を装着しデータを収集した。追跡期間を通した測位成功率は6〜7割程度(DOP9以下での補正値)であり、国内他地域のGPS首輪を用いた事例と比べて比較的高い値を示した。調査地にササ草原や疎林を多く存在することと、ニホンジカがそれらの地域を選択的に利用していることを反映していると考えられた。追跡を行った4個体は12月になると同時短期間のうちに高標高地から低標高地に移動することが確認された。4個体ともに移動前に利用していた地域は台地状の高標高地(標高約1,580m)であり、12月の移動後は、4個体のうち、3個体は東側の低標高地に滞在し、残りの1個体は西側の低標高地に滞在していた(標高約1,050m)。低標高地に滞在した後の各個体の行動は、それぞれ移動前に利用していたのと同じ地域に戻ることが確認された。調査対象地域に生息するニホンジカは、夏にササ草原や疎林が多く存在する大地上の高標高地を利用し、冬になると低標高地へ分散する季節移動様式を持つと考えられた。なお、本研究は環境省事業により実施した。