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一般講演 P3-087

ムラサキシジミ幼虫のアリ随伴に伴う蜜分泌様式

*西森大樹,鈴木信彦(佐賀大・農)

シジミチョウとアリとの一般的な相利共生関係では、シジミチョウは腹部第7節にある特殊な腺から蜜を分泌し、アリはそれに対して天敵からの防衛などの利益を与えているとされている。そこで、ムラサキシジミ幼虫を用いて、寄生蜂に対するアリの役割と共生関係において大きな役割をもつと考えられる幼虫の蜜分泌について調べた。

野外調査によりアリの随伴について調査した。アリの種により随伴性に違いがみられた。また、幼虫の齢期による随伴の違いもみられた。野外で採集した個体から、寄生蜂2種と寄生バエ1種が確認され、その大部分はコマユバチ科のCotesia sp. であった。齢期別の寄生率の比較から、野外ではCotesia sp.は主にムラサキシジミ幼虫が2齢の時期に寄生すると考えられた。そして、2齢幼虫のアリ随伴数および随伴率は低く、2齢幼虫のCotesia sp.による寄生に対しては、アリの防衛効果は低いと思われた。しかし、Cotesia sp.は3齢および4齢幼虫にも寄生が可能であることが確認されたことから、3齢および4齢での寄生蜂に対するアリの役割について考察する。

トビイロケアリが随伴した場合のムラサキシジミ幼虫の蜜分泌頻度を観察した。幼虫は、アリの随伴のない場合にはまったく蜜を分泌しなかった。齢期による蜜の分泌回数には差がみられなかった。アリとの接触開始後の早い時間帯では蜜分泌頻度が高い傾向がみられた。しかし、アリを絶食させて随伴させた場合には、高い蜜分泌頻度が長く維持された。さらに、幼虫は分泌した蜜を回収することもあり、アリ随伴による蜜分泌のコストが考えられた。

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