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一般講演 P3-090
植食性昆虫においては、寄主植物の変更は分化を促す重要なきっかけとなりうることが知られている。植食性昆虫であるルイヨウマダラテントウHenosepilachna yasutomiiは、交配、産卵、発育と生活史の全てをほぼ同じ植物上で行う。本種は東日本各地に分布しているが地域個体群によって寄主植物が異なり、限られた個体群のみが発育に利用できる植物種もある。本研究では、メギ科ルイヨウボタン(本種では一般的に摂食されている植物)を摂食する集団と、エゴノキ科オオバアサガラ(関東地方山間部の集団のみが利用する植物)を摂食する集団に注目し、食草利用能力の遺伝様式を明らかにすることを目的とした。飼育実験を行うために福島県田村市のルイヨウボタン(以下、福島集団)、及び埼玉県秩父市のオオバアサガラ(以下、埼玉集団)からそれぞれ越冬成虫を採集し、各々の幼虫をルイヨウボタン、オオバアサガラ上で飼育し成虫までの発育期間を比較した。その結果、福島集団はルイヨウボタンでは成虫まで発育したが、オオバアサガラはまったく摂食しなかった。一方、埼玉集団はオオバアサガラ、ルイヨウボタンとどちらの寄主植物も利用でき、成虫まで発育を完了した。このように、オオバアサガラの摂食に関して異なる反応が見られた。そこで福島集団と埼玉集団を掛け合わせたものの幼虫をオオバアサガラで飼育し観察した。福島集団メスと埼玉集団オスの組み合わせではオオバアサガラを摂食したが、逆の組み合わせの交配で生まれた幼虫はオオバアサガラを摂食しなかった。これらのことより、オオバアサガラを摂食する能力に関しては、父方の影響を強く受けている可能性が示唆された。