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一般講演 P3-092

近畿地方の都市緑地と里山におけるシルビアシジミの寄主植物利用とWolbachiaの感染

*谷川哲朗・平井規央(大阪府大院・生命)・矢後勝也(東大院・理)・森地重博(神戸市)・蓑原茂(吹田市)・石井実(大阪府大院・生命)

シルビアシジミZizina emelina(シジミチョウ科)は、海浜や河川敷、畦畔などの丈の低い草地に生息し、幼虫は主としてミヤコグサLotus japonicus(マメ科)を利用することが知られている。演者らの調査により、大阪府北部の複数の都市緑地で本種の生息が確認されたが、これらの生息地ではミヤコグサはまったく見られず、シロツメクサTrifolium repens(マメ科)を主として利用する個体群(シロツメ個体群)とセイヨウミヤコグサL. corniculatus(マメ科)を主として利用する個体群(セイヨウ個体群)が確認された。一方、兵庫県南部の里山にはミヤコグサを主として利用する個体群(ミヤコ個体群)が点在している。

本研究では、各個体群雌成虫を採集し、シロツメクサとセイヨウミヤコグサの生葉を用いて産卵選好性を調査した。また、孵化した幼虫にはいずれかの植物の乾燥粉末を用いた人工飼料を与えて飼育した。その結果、シロツメ個体群とセイヨウ個体群の雌は両方の植物に産卵したが、ミヤコ個体群はセイヨウミヤコグサには産卵したものの、シロツメクサにはほとんど産卵しなかった。一方、孵化した各個体群幼虫は、両種植物の人工飼料を食べて発育し、羽化に至った。

演者らの調査により、シロツメ個体群では共生細菌のWolbachia感染個体がみられ、感染個体の子世代は雌のみとなる性比異常を引き起こすことが明らかになっている。セイヨウ個体群とミヤコ個体群についてもWolbachia感染の有無を調査したところ、セイヨウ個体群では感染個体が確認されたものの、ミヤコ個体群では確認されなかった。以上の結果と各個体群のmtDNAの解析結果をあわせて本種の寄主植物利用とWolbachia感染の関係について考察する。

日本生態学会