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一般講演 P3-098

遺伝資源保存園におけるケヤキの紅葉・落葉フェノロジーの産地間差

*矢野慶介,高橋誠,岩泉正和,宮本尚子,久保田正裕(林木育種センター)

これまで樹木では,開葉フェノロジーの種内変異に関する研究が多くの種で行われてきたが,紅葉や落葉のフェノロジーについての研究例は少ない。紅葉時に葉のクロロフィルが分解され,クロロフィル等に含まれていた窒素などが樹体に回収されるとされており,葉が低温などで枯死する前に窒素などを回収することが重要であると考えられる。このため,樹木の紅葉・落葉フェノロジーには,環境条件に適した適期あり,異なる環境条件に適応していると考えられる。本研究では,産地の異なるケヤキのつぎ木クローンを対象に紅葉・落葉フェノロジーの調査を行い,紅葉・落葉の早晩性のクローン間および産地間での変異を明らかにすると同時に,各産地の環境条件との関係を調べた。

調査に用いたのは林木育種センター本所(茨城県日立市)遺伝資源保存園に植裁されているケヤキで,新潟県五泉市から静岡県東伊豆町にかけての13林分から収集したつぎ木93クローン279本である。紅葉・落葉のフェノロジーについて,毎週対象個体の紅葉色と枝に残っている葉の割合を指数評価した。日付データは調査開始日からの経過日数とした。紅葉・落葉の早晩性について,調査で得られた指数値を用いて,産地,産地内のクローンを要因とする巣ごもり分散分析により解析し,クローン間差,産地間差の有無を検定した。さらに,紅葉・落葉の指数値と産地の気温,降水量,暖かさの指数などとの相関関係を調べた。

2005年の結果では,紅葉・落葉の早晩性はクローン間,産地間で有意に異なり,約2ヶ月の差が見られた。また,反復率は0.8前後の高い値を示した。これらのことから,紅葉・落葉の早晩性は遺伝的に強く支配され,産地間で差が見られることが明らかになった。また,気温低い産地のクローンほど早く紅葉・落葉する傾向が見られた。発表時には2006年度の解析結果を加えて議論する。

日本生態学会