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一般講演 P3-106

シラビソ・オオシラビソ同齢林のプロット間でみられる空間構造のばらつき

*鈴木智之,可知直樹,鈴木準一郎(首都大院・理工・生命)

1959年の伊勢湾台風後に更新した北八ヶ岳縞枯山のシラビソ・オオシラビソ同齢林にて空間構造のばらつきを個体の分布様式から評価した。2004年に約1km離れた2地点(H、G)に、50x50mの調査区をそれぞれ2個設置し、調査区内の50 cm以上の木本の位置と胸高直径(DBH)を測定した。

各調査区にてペアコリレーション関数(PCF)を用いて個体分布様式を解析した。地点Gでは、2調査区とも約2m以下のスケールで個体の強い集中分布が、一つの調査区では約5m以下で弱い集中分布が認められた。地点Hでは2調査区とも2m以下のスケールで強い集中分布が、約10m以下で弱い集中分布がみられた。

各調査区を4つのプロットに区分し、各プロットをさらに4つのサブプロットに区切り、それぞれでPCFを求めた。地点Gのプロット、サブプロットでは、個体の分布様式は、ほぼ同様の集中分布であった。地点Hではプロット、サブプロットの個体分布様式にばらつきがみられた。16のサブプロットで、分布様式とサイズ構造の関係を調べた結果、同じ密度では、集中分布を示さないサブプロットの平均DBHの方が集中分布を示したサブプロットのそれより大きかった。

台風に起因する林冠崩壊時に存在した稚樹が成長した森林であるため、現在の地点間や調査区内でみられた分布様式のばらつきは、稚樹の分布様式に大きく依存していると考えられる。特に、地点Hでの調査区内のばらつきは、50m四方の範囲で様々な分布様式を示す稚樹群が混在していたことを示唆する。さらに、分布様式による平均DBHの違いから、このような個体分布の局所的ばらつきが、その後の個体群のサイズ構造にも影響したと考えられる。

日本生態学会