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一般講演 P3-108

ベイズ型ノンパラメトリック推定法を用いた成長解析例

*島谷健一郎(統計数理研究所)

野外で生きる生物を計測して得た数値記録をフィールド生態データと呼ぶ事にする。そこから自然について何らかの知見を導こうとする場合、現時点で人間にできる事は、データを基にいくつかもっともらしいモデルを作り、その中から一番マシなものを情報量規準で選択する事である。フィールド生態データは操作実験のようなコントロールを用意できないため、ある要因の影響の有無を判定したり、要因を特定する事はできない。例えば、有意な相関や線形回帰でもって2者の関係の存在を証明できるわけではなく、単に両者に線形かつ等分散の関係のあるモデルの方が何もないというモデルよりマシだと主張するに過ぎない。ランダム検定に至っては、両者が無関係である、というモデルを否定するだけである。せめて、人間の浅知恵で考えられる範囲でいいから、もう少し現実に近いモデルを立てて、その中からマシなものを選ぶくらいはやらないと、汗して得たデータがあまりにもったいない。とりわけ先人の労苦を含む長期(LTER)データや、遺伝子など金のかかるデータで時間変化(時系列)や空間情報を含む場合、当然のことながらデータ解析法はモデルを軸に構成され発展している。こうしたデータはできるだけ“素直に”モデル化する姿勢が基本である。

モデル化に先立って、まずデータがどんな風なのか眺めたい。しかしこんな作業が意外とむずかしい。2因子間には、単なる線形な増加や減少でなく、U字型や2山3山の関係もあるかもしれないが、散布図だけでは容易に把握できない。ヒストグラムの類では、どんなクラスに区切るかという恣意性が付いて回る。

こういった素朴な欲求に素直に答えてくれそうな道具に、ベイズを利用したノンパラメトリック推定法がある。ここではその生態データへの適用具体例を紹介する。

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