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一般講演 P3-110
草本植物の一部の種において、北日本の日本海側で個体サイズの大型化が生じている。ユリ科の一回結実性多年草、ウバユリ(Cardiocrinum cordatum)とオオウバユリ(C. cordatum var. glehnii)もその一つである。本研究ではウバユリとオオウバユリの個体サイズの違い、地理的な分布境界の有無、サイズ変異に関与する環境要因について明らかにしたい。
2006年7月下旬-10月中旬にかけて、茨城、栃木、福島、新潟の4県に52ヶ所の調査地を設置し、合計522繁殖個体において植物高、果実数、葉数と最大葉の葉面積を計測した。これらのサイズパラメータについて、計測した全個体を用いた頻度分布を求めたところ、いずれも一山型の分布を示したため、ウバユリとオオウバユリを個体サイズによって区別することは困難であった。地理的な個体サイズの変化傾向を調べたところ、栃木県北部において不連続な変化を示した。また、内陸部から日本海沿岸に向けて連続的に個体サイズが減少する傾向があった。
次にウバユリ・オオウバユリの個体サイズを目的変数、各生育地における環境要因を説明変数とする重回帰モデルを作成し、サイズ変異に関与する環境要因を解析した。気象庁アメダス観測地点の気象データと全天写真による開空度データに基づき、各調査地における生育期間中の気温、降水量、光量を推定した。また、春先の融雪水が成長とサイズ変異に与える影響を考慮して、生育開始前の積雪量も説明変数に加えた。これらの環境要因を組み合わせることで、1つの目的変数につき15通りの重回帰モデルを作成し、AIC値によるモデル選択を行った。その結果、気温、積雪、降水、光量の効果を同時に含むモデルの説明能力が高く、複数の環境要因が個体サイズの変異に寄与していると考えられた。特に、生育期の気温は個体サイズに対して顕著な負の効果を示した。