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一般講演 P3-114
鳥取砂丘では戦後植林した砂防林が成長するとともに砂丘内の砂の移動が鈍くなり始め、海浜植物の分布拡大、外来植物の侵入拡大と相まって草地化が進行してきた。これにともない1991年より外来植物の除草が開始されている。現在では昭和30年代当時の砂丘景観を取り戻す目的で、砂丘内に生育する在来海浜植物を部分的に除草することの是非について議論が行われている。このため、まずは在来海浜植物の現状と生態を把握することが必要である。そこで本研究では自然状態が維持されている鳥取砂丘において海浜植物の植物季節(フェノロジー)に着目し、代表的な海浜植物の開花時期および散布時期、海浜植物ごとの植物季節の変化、砂の微細な動きを調査し、砂丘景観との関連を明らかにすることを目的とした。代表的な5種の海浜植物を対象とし、砂丘内に砂地の対照区とあわせて57ヵ所の調査プロットを設置した。プロットごとに50cm×50cmの方形区を設定し、その四隅にポールを一定の地上高となるように固定した。一定期間ごとに植物の開花と散布の有無を記録、調査プロット全体を真上から撮影およびポール高の地上高を計測し、時間経過による植物の季節変化ならびに砂の移動量を観測した。また砂丘内に定点観測地点を設定し景観写真撮影を行い、季節にともなう鳥取砂丘の景観変化について検討した。海浜植物の開花は図鑑に記載されている時期よりも若干早く進行した。季節経過にともない地上部植物量、とくに緑葉面積は大きな変化を示した。また植物種により地上部植物量の変化には大きな違いがあった。砂の移動量は海浜植物プロットでは堆積傾向、砂地プロットでは削剥傾向が見られたが、群落全体が砂に埋もれることは少なかった。これらのことから砂丘景観の管理には、種ごとの植物季節の違いを考慮する必要があると考えられた。