| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P3-115

植林後50年を経た海岸クロマツ林の構造と立地環境

永松 大・山田陽介(鳥取大・地域)

現在,観光で訪れる鳥取砂丘の周囲に広がっているクロマツ砂防林は戦後に植林されたものである。鳥取砂丘では1950年前後に国土保全・農地拡張を目的とした大規模造林が行われた。植林されたクロマツは順調に生育して砂防効果を発揮するようになり,飛砂や砂の移動が減少して砂丘では逆に草原化が問題になっている。植林初期にはクロマツの生長が追跡され,その後もマツ枯れついて研究が行われてきたが,植林後50年が経過したクロマツ林の現状については詳細な情報がない。そこで本研究ではまとまって残っている鳥取砂丘西側海岸砂防林の現在の植生に着目し,植林後50年が経過した鳥取砂丘西側砂防林の現状と遷移の状態について明らかにすることを目的とした。まず砂防林内でGPSを用いて植生図を作成した。砂防林を横断する650m,幅10mのラインを海岸線に向かって設置し,10m区画ごとに毎木調査を行った。樹高2m以上の木本個体を対象に,樹種と胸高直径,樹高,株数,個体の状況を記録した。あわせて草本層の植生調査,クロマツ稚樹(樹高30cm〜2m)個体数,土壌調査を行った。過去の空中写真と現在の植生を比較した。

毎木調査で個体数が最も多かったのはニセアカシアで,クロマツ,アカメガシワと続き,3種で全体の8割を占めた。植林されたクロマツの密度は場所によって大きく異なり,クロマツで林冠が閉じている部分からマツが全くなく落葉樹の低木がヤブ状になった部分まで砂防林内には様々な場所が存在した。クロマツの稚樹も偏在していたが,上層のマツの有無では説明できなかった。現在の植生は1970年撮影の空中写真と比較してマツが優占する部分とそれ以外の部分の違いがより鮮明になってきていることがわかった。砂防林内には一部にコナラやタブノキが定着しており,海岸植生としての今後の植生変化が興味深い。

日本生態学会