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一般講演 P3-136

林分内の樹木個体間・樹種間の成長の同調性

木村勝彦(福島大・理工)

樹木の肥大成長は周辺の光環境、水分条件、地形、他個体との競争、気象条件、結実の豊凶など、様々な要因に影響を受け、年輪幅のパタンとして記録される。本研究では地形的に均質で同所的に多くの種が生育している二次林において個体間・種間での成長の同調性について検討をおこなった。

調査地は福島県土湯の標高約700mに位置する60年生の二次林で、地形的に平坦でミズナラ、クリ、ブナ、ウリハダカエデなどの優占する多様性の高い森林である。この林分では1haの調査区が設置されており、一部でシードトラップによる結実等のモニタリングが2001年から実施されている。この試験地において、2005年秋に林冠木7種50個体から成長錐により年輪試料を採取した。

林分の発達に伴う成長の変化としてはミズナラやクリで1980年頃以降の成長低下がみられ、特にミズナラでは顕著であり、1980年以前よりも成長が半減した。他の樹種ではある程度の成長低下が見られるものもあったが、二次林の林冠の鬱閉による個体間競争がそれほど強く効いていないものと考えられた。

種内の個体間の短い周期成分の年輪パタンの同調性は、ミズナラ、コナラで高く、クリ、ブナでは低かった。ブナは強い豊凶を持ち、豊作年には肥大成長が低下することが知られており、福島県でもより標高の高い分布の中心域では大豊作年の1995年などに極端な成長低下が見られたが、本調査地において豊作が確認できた2000年や2005年には際だった年輪の変化が認められず、これが個体間の同調性の低さにつながっている。ミズナラ、クリでは豊作年に年輪幅が広くなる傾向が認められた。

種間の年輪パタンの同調性は結実に関して必ずしも同調していないクリ、ミズナラ、コナラの間で高く、ブナはこの3種とほとんど無相関であった。

日本生態学会