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一般講演 P3-148

スクミリンゴガイの野外における貝汁に対する反応

相崎香帆里,遊佐陽一(奈良女子大・理)

スクミリンゴガイPomacea canaliculataでは、同種他個体が捕食などにより傷ついた際に出される体液(貝汁)に反応して、逃避行動を示すことが知られている。しかしこれまで本種の逃避行動については、単純な室内実験でしか調べられておらず、本来逃避行動が適応的な意味をもつ野外の複雑な環境下での行動は調べられていなかった。そこで本研究では本種が生息する水田と水路において野外観察を行った。

観察個体の近くにつぶした個体を静置し、その前後の行動を比較した。その結果、つぶし貝静置により「潜土」や「浅瀬への移動」といった逃避行動がみられ、野外でも貝汁に対して反応があることが判明した。さらに、野外では逃避行動に加え、「採餌」という逃避とは相反する行動が高い割合で誘発されることがわかった。

また、空腹度の行動への影響を調べるために、餌条件の違う水田で観察したところ、餌条件が良い水田で有意に逃避率が高かった。このことから、貝汁に対する貝の逃避には、空腹度が関わっていることが示唆された。さらに体サイズ別(小:殻高>1cm;中:1〜2.5cm;大:2.5cm<)に貝汁に対する反応を観察したところ、中サイズの貝が最も高い逃避率を示すことがわかった。

以上より、複雑な環境をもつ野外における貝汁に対する本種の反応は、環境条件や生理的な状態、成長の影響をうけていることが明らかになった。

日本生態学会