| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P3-151

北海道におけるセイヨウオオマルハナバチの野生化範囲の拡大とその要因

横山 潤, 糠塚ゆりか(東北大・生命科学)

セイヨウオオマルハナバチBombus terrestrisは、ハウストマトなどの農業用授粉昆虫として広く利用される一方、北海道では各地で野生化が報告されており、在来生態系への影響、特に在来マルハナバチ類との競合懸念されている。本研究では、セイヨウオオマルハナバチの野生化範囲拡大の現状と、その環境要因との関連を明らかにすることを目的とし、北海道内各地で野外調査を行った。

道央から道南にかけての約50地点について、2004-2006年の3年間、毎年7月に在来マルハナバチ類の種構成と個体数、およびセイヨウオオマルハナバチの有無について調査を行った。得られたマルハナバチ類はセイヨウオオマルハナバチを含め10種で、3年間を通してニセハイイロマルハナバチが最も多く、ついでエゾオオマルハナバチの個体数が多かった。セイヨウオオマルハナバチの個体数は2004年はエゾトラマルハナバチより少なかったが、2005年に逆転し、以降はエゾオオマルハナバチについで多いマルハナバチとなっている。セイヨウオオマルハナバチが確認された地点は全体的に増加傾向にあり、2004年が全体の1/4程度であったのに対し、2006年は40%以上に達した。その一方で、確認されなくなった地点もあった。増加した地点はいずれも農耕地で、エゾオオマルハナバチが記録されない地点が多かったが、エゾオオマルハナバチの分布している地点でも新たに確認された地点がある。これらのことから、セイヨウオオマルハナバチは局所的な消長を繰り返しながらも、全体としては農耕地を中心に分布を拡大させている状況にあり、その傾向はエゾオオマルハナバチが少ない地点で顕著であることが示された。

日本生態学会