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一般講演 P3-153
スクミリンゴガイは南米原産の淡水巻貝で,日本に侵入してから25年以上が経過している。本種は稲などの農作物を加害するため,盛んに研究が行われており,これまでに水田における操作実験によって,最大殻高などに対する密度効果も検出されている。
本研究では,実験的操作を加えない野外個体群における個体群動態と密度効果を解明するために,スクミリンゴガイの密度や殻高,卵塊密度やサイズ等を調査した。奈良県奈良市の水田16枚において,2005年6月上旬から9月上旬まで中干し時期を除いてほぼ2週間おき,および翌2006年6月に,調査を行った。
越冬後の第1世代の大半は7月上旬までに急速に成長し,ほぼ最大殻高に達した。産卵も7月上旬にピークを示した。次世代(第2世代)の出現は中干し後の8月上旬からで,翌2006年6月上旬には第1世代は消滅し,第2世代の個体のみとなった。
2005年6月下旬の貝密度と7月上旬の殻高との間に負の相関関係がみられ,殻高に対する密度効果が検出された。また,7月上旬の殻高と同時期の単位面積当たり卵数との間に正の相関関係がみられた。このことは,越冬世代密度が産卵最盛期の卵数に影響していることを示唆している。
また,越冬前の2005年9月の第2世代の密度と越冬後の2006年6月の密度に正の相関関係がみられた。このことにより,前年の貝密度によって翌年の貝密度がある程度予測できることが判明した。
一方,第1世代の貝密度や殻高と第2世代の密度や殻高との間にはほとんど相関関係がみられなかった。このように世代間の強い密度効果が検出できなかったのは,本種の孵化率が非常にばらついていることなどが影響していると考えられる。