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一般講演 P3-154

ウシガエルの分布とアメリカザリガニの体サイズ構造および密度の関係

*美濃和駿(東京大学生物多様性), 宮下直(東京大学生物多様性)

ウシガエルRana catesbeianaはアメリカ合衆国から導入された大型の外来カエル類である。貪欲な捕食者であり、在来の動物群集に負の影響を与えると考えられている。外来種アメリカザリガニProcambarus clarkiiもまた在来群集に負の影響を与えることが知られているが、成熟したウシガエルの成体は餌資源としてアメリカザリガニに強く依存することが明らかになっている。ウシガエルがアメリカザリガニに与える負の影響が大きくない場合、アメリカザリガニの存在によってウシガエルの侵入が促進され、アメリカザリガニが単独で存在する場合と比較して在来群集に及ぼされるインパクトが相乗的に増加する可能性が考えられる。

本研究では、そのような現象を検証する第一段階として、千葉県佐倉市の印旛沼流域においてウシガエルとアメリカザリガニの広域分布調査を行い、ウシガエルの生息地と非生息地とでアメリカザリガニの体サイズ構造と相対密度を比較した。その結果、アメリカザリガニの相対密度はウシガエル生息地において非生息地の7倍以上高い値を示した。また、サイズ構造に関しては、ウシガエル生息地で捕獲されたアメリカザリガニの71%が小型個体(CL<10mm)だったのに対し、非生息地において小型個体の割合は32%だった。大型個体(20≦CL<30mm)の割合は、ウシガエル生息地においては2%であったのに対し、非生息地においては21%と大きく異なっていた。

以上のことから、ウシガエルがサイズの大きいアメリカザリガニを選択的に捕食し、そのことによって種内競争が弱まり小型個体が増加する可能性が示唆された。ウシガエルがアメリカザリガニの密度とサイズ構造を変化させることによって在来群集に及ぼされる影響がどのように変化するか、今後の検証が課題となる。

日本生態学会