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一般講演 P3-156

南西諸島におけるツヤオオズアリの集団遺伝学的解析

*大西一志, 中島裕美子(琉大・COMB), 高橋純一(玉川大・ミツバチ), 諏訪部真友子, 菊地友則, Julien Le Breton, 辻和希(琉大・農)

アリの中で人為的交流により世界的に分布を広げている種の中には侵入地域において、同種コロニー間のテリトリーが消失した巨大な単一コロニー(Unicoloniality)を形成することがある。繁殖力、多種個体への攻撃性の高さから、在来アリ群集への生物学的影響や、間接害虫としての農業被害が報告されている。さらに、Unicolonialityを示す場合には、コロニー内の個体間血縁度が0に近くなり、真社会性の維持の問題としても注目されている。

ツヤオオズアリ(Pheidole megacephala)は人間の交流に伴い世界中の熱帯・亜熱帯に分布が広がったと考えられている。日本国内では奄美大島以南のほぼすべての島に分布し、海岸などの撹乱環境に生息している。アフリカ原産といわれるが,南西諸島における分布拡大の経緯は不明であり、現在どの程度の遺伝子流動があるのも不明である。遺伝的多様性低下仮説によるUnicolonialityの進化についての説明から、南西諸島の島でも侵入時のボトルネックによりUnicolonialityを進化させている可能性がある。

そこで、島嶼環境である南西諸島における4つの島で、5つのマイクロサテライトDNAマーカーを用いて、ツヤオオズアリの遺伝的な解析を行った。血縁度を指標とした解析では、コロニー内の個体間血縁度は島毎にそれぞれ異なっていた。その中でも宮古島の個体群が最も低かった。行動観察からも、宮古島におけるコロニー間のテリトリー争いが希薄であったため、宮古島のツヤオオズアリ集団は単一コロニーであると考えられる。一方、沖縄本島や南大東島、奄美大島の集団では、血縁度が高い個体で構成されたコロニーが多かった。

日本生態学会