| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P3-159

森林の撹乱が外来種の侵入に与える影響

*諏訪部真友子,大西一志,菊地友則,辻和希

撹乱は在来種群集に影響を与えるだけでなく、外来種の侵入を促す要因の一つになると考えられている。本研究では、亜熱帯常緑広葉樹林における間伐が、外来性アリ種の侵入と在来アリ群集に与える影響を評価することを目的とし、伐採が行なわれた森林内のアリの分布を伐採前と伐採後(一年後)で比較した。

調査の結果、伐採後に新たに侵入が確認された外来種はいなかったが、伐採前からすでに森林内で確認されていた外来種アシジロヒラフシアリの分布が拡大しており、伐採後樹上に設置した餌トラップの多くは本種によって占有されていた。また、伐採前と比較した伐採後の在来アリの種数や出現頻度には大きな変化はなく、伐採後に著しく減少した種はいなかった。林床に設置した餌トラップには外来種アシジロヒラフシアリはほとんど集まらず、伐採前も伐採後も数種の在来種によって占有されていた。林床の餌を占有していた在来種の中でも、優占種であるオオズアリでは餌に集まった個体数は伐採後に増加していたが、その他の在来種では採餌個体数は減少していた。

以上の結果から、亜熱帯における森林伐採などの環境撹乱は直接的に外来種の侵入を促さない場合でも、すでに侵入していた外来アリ種の分布を拡大させる要因になり得ることが示された。また、伐採後一年経過段階では伐採が在来アリ群集へ与える影響は顕著ではないが、外来種の増加や優占種の単一化に伴いアリ群集構造が今後変化していく可能性が高いことが示唆された。

日本生態学会