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一般講演 P3-160

知床における外来哺乳類問題

*池田 透,立澤 史郎(北大・文・地域システム)

世界自然遺産登録地の知床においても外来種問題は深刻な問題となりつつある。本報告では、知床半島で2004年度から実施してきたアライグマ侵入状況調査を基に、知床半島における外来哺乳類の侵入状況と、対策への課題を検討する。調査地は斜里町本町から知床国立公園内の知床五湖にかけての河川及び河口周辺部と羅臼町本町からルサ川河口にかけての河川及び河口周辺部である。知床半島では、2001年からアライグマの目撃及び轢死体の記録があり、その後も毎年目撃情報が得られ、2005年には国立公園内での目撃情報が得られるに至り、侵入地域の拡大が危惧されている。2004年からは、箱ワナ及び足跡トラップの設置による侵入状況調査を実施してきたが、2004年に雪上に残された足跡を発見した以外は、捕獲・痕跡確認には至ってはいない。以上のことから、知床半島では生息情報はあるものの、かなり低密度で生息していることが予想された。アライグマ捕獲では、在来種との混獲を考慮して箱ワナによる捕獲が試みられているが、箱ワナ捕獲は労力を要する手法であり、このような低密度状況下では費用対効果は低く、今後は、より破格効率が高く、また底密度でも検出力の高い手法の導入が不可欠と考える。また、知床半島のようにヒグマが高密度で生息している状況では、対策実行者の安全確保のためにも、ヒグマとの遭遇を避けるために、サケ・マス遡上時における捕獲作業の回避等の対策実行時期の再検討、探索犬導入によるヒグマ冬眠時のアライグマ営巣地の探索等の工夫が必要である。さらには、アライグマの捕獲事業中に、アメリカミンクの捕獲が相次ぎ、新たな外来種問題の存在が明らかとなってきた。知床半島の生態系を守るためには、アメリカミンクについても在来生物への影響を明らかにし、しかるべき対策を早急に構築することが必要となっている。

日本生態学会