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一般講演 P3-162

コマツナギとその訪花昆虫に対する外来植物の影響

*萩原陽二郎,山口祥伸,山下雅幸,澤田均(静岡大・農)

コマツナギIndigofera pseudotinctoriaはマメ科の木本で、絶滅危惧種に指定されているミヤマシジミLycaeides argyrognomonの食餌植物である。近年安倍川のコマツナギ自生地にシナダレスズメガヤEragrostis curvulaなどの外来植物が侵入し、コマツナギやミヤマシジミ個体群への影響が懸念されている。そこで、本研究では2005年より安倍川中流域門屋の河川敷において、外来植物除去区(以下除去区)と外来植物非除去区(以下非除去区)を設置し、コマツナギの花数、総状花序数、結果率およびコマツナギへの訪花昆虫について調査した。

除去区では3個体(全個体数の9%)が開花しなかったのに対して、非除去区では11個体(同30%)が開花しなかった。総状花序数は、除去区と非除去区の間に有意差が認められ、除去区における個体あたりの花序数が多かった。結果率に関しても非除去区より除去区が高かった。コマツナギへの主な訪花昆虫として、ヒメコバチ科1種、コハナバチ科1種、ハキリバチ科2種が確認された。除去区における単位時間あたりの訪花回数は非除去区より多かった。各訪花昆虫による訪花頻度は除去区でハキリバチ科による訪花が全訪花回数の94%と極めて高く、非除去区とは訪花パターンが異なった。

以上の結果から、シナダレスズメガヤを始めとする外来植物の河川敷への侵入はコマツナギの生育に対して負の影響を及ぼしていること、さらに、コマツナギだけではなく、コマツナギを利用する訪花昆虫に対しても負の影響を及ぼしていることが示唆された。安倍川流域におけるミヤマシジミ個体群の生息地は著しく減少しており、今後もシナダレスズメガヤの分布拡大が続けば、ミヤマシジミがこの地で絶滅することも十分に考えられる。

日本生態学会