| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P3-163
ダムの建設や都市化などの人間活動は淡水生物の多様性を低下させている。一般に在来魚の減少、逆に侵入生物である外来魚の増加が指摘されている。本研究は、淡水魚類を在来魚と外来魚と分け、ダムと都市化が各魚類群の種数に及ぼす影響を北海道全域で把握することを目的とした。
本研究で用いたデータの種類は、1)北海道淡水魚類データ (福島、2005)。2)ダム分断の有無。3)3次メッシュの土地利用(国土数値情報、1996)。4)その他、気象、標高、緯度・経度、集水面積、調査年である。都市化を示す変数は土地利用の第1主成分(PCA)と定義した。約7500の3次メッシュの魚類調査データを基に、在来魚と外来魚の種数、また、在来魚の比率を目的変数とし、一般加法モデルを構築した。
解析の結果、在来魚と外来魚ともに、その種数は調査年、標高、集水面積、緯経度によって有意に説明された。また、都市化されている地域ほど在来魚や外来魚の種数が高くなる傾向が見られた。在来魚の種数に対するダムの影響は見られなかったが、外来魚の場合は、ダムによって分断された地点やダム湖内で種数が有意に高かった。
全種数に対する在来魚種数の比率は、ダムの有無、土地利用、緯度・経度、集水面積と特に有意な関係を示した。在来魚の種数はダムの有無と有意な関係は認められなかったが、在来魚の全種数に対する比率は、ダムによって分断されていない地点ではダム上流あるいはダム湖内より有意に高かった。また、土地利用に関しては、在来魚と外来魚ともに都市化の程度が高いほど種数が豊富であったが、在来魚の比率で見ると都市化率の増加とともに低下した。すなわち、都市化による外来魚の増加率は在来魚のそれを上回っていることを表している。