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一般講演 P3-167
トウネズミモチは、中国原産の外来種で、大気汚染に強いことから戦後多く植樹されており、現在都市部(吉永・亀山 2001;橋本ほか 2005)や河川(橋本ほか 2003)で分布拡大が指摘されている。また、孤立林では鳥類散布植物が多いことが知られる(戸島ほか 2003)が、そこでもトウネズミモチの実生個体が多いことが報告されている(石田ほか 1998)。そのため、種子散布、発芽率、その後の生存率の特性を解明することを試みた。そこで、本研究では、調査地である神奈川県都市域に一般的に分布しており、生活形が同様に常緑小高木で同属のネズミモチと比較し、トウネズミモチの生態学的特性を明らかにする。
調査は、鳥類による採餌、果実数の変化、果実サイズの測定、果実量の推定、異なる光条件での発芽率、実生の生存率について行った。
鳥類による採餌は、トウネズミモチ205羽(主にヒヨドリ、シジュウカラ、メジロ)、ネズミモチ19羽(主にヒヨドリ)で、トウネズミモチに多くの鳥類が観察された。果実サイズは、トウネズミモチが有意に小さかった(p<0.001)。果実量の推定は、トウネズミモチが有意に多かった(p<0.01)。発芽率は、光環境に関わらず発芽した。しかし、実生の生存率は、林縁では74%と高いものの、林内では、16%と低かった。
果実サイズが小さいことで口径の小さな鳥類にも採餌され(唐沢, 1989)、結実量が多いことは鳥類をひきつけるのに重要である(Sallabanks, 1992)ことから、多くの鳥類がトウネズミモチに採餌する結果となったと考えられる。種子散布されたトウネズミモチは、どのような環境でも発芽が可能であると考えられるが、実生の生存には高い光要求性があり、光条件の悪い立地では枯死していくと考えられる。一方、光条件が良い立地では生存していくものと考えられる。