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一般講演 P3-171
近年、岡山県南部の湧水湿地において、人為的に移入されたと考えられる外来食虫植物の生育が報告されるようになった。2004〜5年の調査により、サラセニア科1属3種、モウセンゴケ科2属7種,タヌキモ科1属3種、計13種の外来食虫植物が生育し、ほとんどの種類で開花あるいは結実、幼苗の生育が確認されたことから、定着に成功していることが判明した。
これら外来食虫植物が在来種に与える影響を検討するため、2004年にトウカイコモウセンゴケ Drosera tokaiensisと外来種であるナガエモウセンゴケ Drosera intermedia(以下ナガエ)が混生している場所に1m2のプロットを2つ設置し、個体識別を行って生育型の調査を行ったところ、5〜11月の間に、個体数の増加はトウカイが約1.5倍だったのに対して、ナガエが約3倍となった。ナガエは花数も多く、非常に優勢であった。また、Morisita(1959)のIδ法により、プロット内での分布パターンを調べたところ、いずれも集中分布を示したが、湿潤なプロットでは概ね同程度であったのに対し、乾燥気味のプロットではナガエがより強い集中性を示した。これはナガエが乾燥気味のプロットにおいても盛んに葉片等からの栄養繁殖を行ったためであり、ナガエは高い環境適応能力を持つことが明らかとなった。
岡山県では2005年よりこれらの外来食虫植物の駆除に取り組んでいるが、根絶は非常に難しい状況になりつつある。移入の初期段階であることから、生態的リスクを緊急に評価し、注意を喚起することにより、生育地の拡大を防ぐことが急務である。