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一般講演 P3-172

群馬県利根川水系に侵入した特定外来種水生植物の分布

大森威宏(群馬自然史博),石川真一(群馬大・社会情報),青木雅夫(館林市教育委員会),増田和明(中之条町立中之条小学校)

群馬県では平野部の河川や池沼を中心に、特定外来種であるミズヒマワリ、オオカワヂシャ、オオフサモ、ボタンウキクサが分布する。2006年現在ミズヒマワリとオオカワヂシャの分布上限はそれぞれ藤岡市、高崎市(旧群馬郡箕郷町)で、両種とも下流域へ連続した分布域をもっていた。オオフサモは主に県南東の平野部に広く侵入していた。

埼玉県境の群馬県伊勢崎市の利根川ではミズヒマワリは1m2あたり平均30本以上の茎を密生させ、止水域のほか、通常は流れが緩やかな河畔にもクローンを形成していた。オオカワヂシャは、埼玉県境の神流川合流点より下流では、カワヂシャより個体数が多く、水深30cmを超える場所でも生育していた。オオフサモは河川本流から切り離される場所や、干上がることもある浅い水路に密な群落を形成した。

これらの特定外来種が生育する立地は、キタミソウ、スズメハコベなどの絶滅危惧種の生育立地と重なる。このため繁茂した特定外来種が絶滅危惧種の生育立地を占拠し、締め出す危険性がある。さらに、これらの特定外来種の分布域には荒川や元荒川に水を供給する利根大堰があり、植物の断片がこれらの流域に侵入する危険性もある。

さらに浅間山麓に位置する長野原町(海抜970m)からオオカワヂシャの、赤城山麓の桐生市(旧勢多郡新里村:海抜400m)からオオフサモの越冬・定着が確認された。ボタンウキクサも県南部の太田市(旧新田郡新田町:海抜60m)で越冬が確認された。これらの分布地点にはいずれも湧水がみられ冬季でも凍結しないため、越冬が可能と考えられる。冬季結氷しない湧水池は、温暖な地域を原産とする外来種の供給源となる危険性をともなっている。

日本生態学会