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一般講演 P3-174
内湖とは琵琶湖周辺に散在する衛星湖で,陸域と琵琶湖をつなぐ場所であり,多くの魚類にとって産卵場所,仔稚魚の成育場所として重要な環境であった.しかし,現在は干拓の影響や外来種の侵入によって内湖本来の生態学的機能が発揮されておらず,また内湖の保全・復元に必要な現況についての定量的な調査も不足している.本研究では,内湖に生息魚類の産卵場所の選択性,仔稚魚の成育場所を分析し,在来種の適切な繁殖条件を解明するため,内湖の1つである西の湖において流入出河川・水路等の周辺水域を含む54地点で仔稚魚,20地点で成魚を対象として魚類相調査を行なった.採集した仔稚魚については形態学的観察,およびmtDNAチトクロムb領域前半部のシークエンスにより同定した.
仔稚魚調査の結果,外来魚と在来魚の仔稚魚の生息場所は大きく異なっていた.西の湖内ではオオクチバスの仔稚魚が優占的に出現し,フナ属魚類やカネヒラを中心とした在来のコイ科仔稚魚が優占的に出現したのは流入河川や西の湖と水路等により連続している小水域に限られていた.各地点の環境条件は,西の湖周縁部はヨシ帯が発達しているものの陸ヨシ帯が多く,沿岸帯が水域側で切り立っているためなだらかな移行帯は形成されていなかった.対象的に西の湖周辺の水域では泥やリターの堆積があり,抽水植物帯が陸から水域へなだらかに移行していた.成魚の分布調査の結果では,仔稚魚に見られたような在来種・外来種場所による極端な出現状況の差異は見られず,調査地点のすべてで両者が確認された.
西の湖において成魚では外来種が占拠する一方,在来種が繁殖するための環境条件について重要な情報が得られた.これらの結果から,内湖の環境保全の指針についても考察したい.