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一般講演 P3-177

小笠原諸島での侵入哺乳動物による海鳥類被害

*堀越和夫,鈴木創,佐々木哲朗,鈴木直子(小笠原自然文化研究所)

本研究は小笠原諸島において外来哺乳類であるネコおよびクマネズミが海鳥類に深刻な被害を与えている事例を報告するものである。

2005年4月より母島南崎の海鳥繁殖地で海鳥飛来とネコによる被害状況のモニタリングを行った。カメラ映像によりネコのカツオドリ成体捕食を直接観察し、同年6月初旬までオナガミズナギドリ12羽とカツオドリ3羽の死体を確認した。緊急対処としてネコ4頭を捕獲排除したが、2005年の海鳥繁殖は皆無であった。聞き込み調査によりネコの繁殖鳥の捕食は長年に渡っており、繁殖場消滅の危機にあることが判明した。

2006年6月より父島列島東島のアナドリ等の海鳥繁殖地で海鳥飛来とネズミによる被害状況のモニタリングを行った。同年10月末までにアナドリ被害数は約200平方メートルの調査区で約190羽におよび、捕食被害は全島範囲であった。卵や羽軸の食痕およびトラップ捕獲などより、クマネズミによる捕食の可能性が極めて高いと判断された。被害は飛来期に始まり、調査区では抱卵期終了までに卵と繁殖鳥は全滅したもようで、更に繁殖期後期に飛来する非繁殖鳥も被害を受けていた。2006年における東島全体のアナドリ被害数は1000羽を越える深刻な事態と考えられた。なお現在モニタリングを継続中であるが、2006年12月時点で新たにオーストンウミツバメを含めた冬期に繁殖する海鳥類の死体が確認されており、海鳥被害が周年に渡っている可能性が高いと考えられる。

本研究は、地球環境研究総合推進費「脆弱な海洋島をモデルとした外来種の生物多様性への影響とその緩和に関する研究」において実施した。

日本生態学会