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一般講演 P3-180

東京都武蔵野台地東部におけるカミツキガメの定着状況

佐藤方博(生態工房)

カミツキガメChelydra serpentinaは北米から南米大陸に生息する淡水性の大型カメである。本種は1960年頃から日本へ輸入され始めたが、成長初期で大型化し長命であることから、後年は飼育放棄によって野外放逐される個体が増加し、全国各地で放逐個体の発見事例が頻発した。東京都武蔵野地域東部においては、著者らによる1999年から2004年までの捕獲採集調査により、毎年少数個体が採集され、性成熟したメスの生息も確認された(佐藤・神澤2005)。

本種は肉食傾向の強い広食性大型カメであるため、野外においては在来水棲動物の強捕食者として、地域固有の生態系へ悪影響を及ぼす可能性が危惧されている。2005年の外来生物法の施行以降、本種の新規飼育・商用販売・無断放逐は禁止されたが、既放逐個体の野外定着による個体数増加や分布域拡大の影響は、引き続き懸念されている。よって、著者は2005年以降も武蔵野地域東部の都市公園池4カ所と河川地域1カ所において捕獲によるカミツキガメの採集調査を実施し、当地における本種の生息状況の把握と採集個体の解剖によって生殖器官の成熟状態を確認した。

2005年と2006年の各年6月から10月までの採集調査の結果、捕獲されたカミツキガメは計27個体(メス16、オス3、性不明8)であった。光が丘公園(練馬区)と石神井公園(練馬区)においては成体と幼体が複数採集され、2006年の採集個体のうち光が丘でメス1個体オス2個体、石神井でメス5個体の性成熟を確認した。さらに光が丘と石神井の成熟メスのなかには、体内に卵殻形成された卵を保有している産卵直前個体も確認された。以上のことから、武蔵野地域東部においては2005年以降もカミツキガメの生息が認められ、光が丘公園と石神井公園においては成熟個体による繁殖が行われ、本種が定着している可能性が示唆された。

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