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一般講演 P3-188

プランクトン群集を対象とした、栄養塩利用に関する形質の進化に環境条件が与える影響

水野晃子(東北大学生命科学研究科),河田雅圭(東北大学生命科学研究科)

これまで、植物プランクトンの最適栄養塩要求比(例えば窒素:リン比)の決定には、その水柱の栄養塩存在比によって決まる、制限栄養塩がもっとも重要であると言われてきた。近年、植物プランクトンの生理学的特徴と栄養塩要求比の関係が明らかとなるにつれて、これとは異なる考え方が提示された(Klausmeier et. al. 2004)。それは、植物プランクトンの内部構造をもとに栄養塩要求比を決定するという考え方である。内部構造は、主に栄養塩の獲得に関する部分と増殖に関する部分の二つに分けられ、その二つは異なる栄養塩比を持つ。Klausmeierらは環境の状態によって内部構造の最適な細胞内比率が異なることにより、植物プランクトンの栄養塩要求比が決定されると結論付けた。

この研究では、二つの内部構造がそれぞれ有利になる環境は、二つの全く異なる環境として扱われている。一つは供給される栄養塩供給、希釈率が常に一定である場合、もう一つは供給される栄養塩供給は一定であるが希釈率が変化する場合である。一つ目の条件では、平衡状態下での増殖となるため、栄養塩の獲得に投資するタイプが有利になるが、二つ目は常に希釈に伴う死亡率が変化するため、内的自然増殖率(最大増殖率)を高めることが有利になる。

しかし、実際の野外の環境では、栄養塩供給が平衡状態と様々なパターンの非平衡状態が存在すると考えられる。そして、その二つの内部構造のどちらにどれだけ投資することが最も有利になるかは、非平衡状態のパターンによっても様々に変化する可能性がある。そこで、本研究では様々な不平衡状態の環境下で、最適な内部構造分配が異なるのか、また、その結果として植物プランクトンの栄養塩要求比がどのように進化するのかをシミュレーションモデルを用いて調べた。

日本生態学会