| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P3-193

揮発性物質を介した植物の間接防御と植食者の選好性:ヤナギ群集内での種間比較

*米谷衣代,高林純示(京大・生態研)

植物の防御戦略には、毒物質の生産などによって植食者の食害を直接的に抑える防御(直接防衛)と、天敵誘引物質の生産などによって植食者の天敵を利用する間接的な防衛(間接防御)がある。この2つの防衛はトレードオフの関係にあると言われてきたが、直接防御物質と天敵誘引性の揮発性物質との間の資源分配の視点からは支持されていない。もし直接防御で十分なら天敵を呼ぶ必要がないであろう(天敵不要仮説)。また、植食者が多く集まるような植物があれば天敵はそのような植物を選好するようになる場合も考えられる(植食者選好性仮説)。そこで本研究では、ある群集内における相対的な植物の被害レベルと天敵の誘引性によってそれぞれ直接・間接防御レベルを評価することで、これら2つの仮説の検証を試みた。具体的には、同所的に生息するヤナギ属植物7種の系に注目し、植食者としてヤナギルリハムシ成虫・幼虫、その幼虫期の主な捕食者としてカメノコテントウを用いた。ヤナギルリハムシ成虫の産卵選好性、ヤナギルリハムシ幼虫がヤナギに与える被害のレベル、カメノコテントウの7種のヤナギ揮発性物質に対する選好性を調べた。その結果、天敵の誘引性と植食者の選好性に顕著な相関は見られず、植食者選好仮説は支持されなかった。一方、ヤナギ各種のヤナギルリハムシに対する直接防御レベルが高い(受ける食害面積が小さい)ほど、天敵の誘引性が低いという関係から天敵不要仮説が支持された。

日本生態学会