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一般講演 P3-197

オス間闘争があるとき生み分けできない親は娘に過剰に投資する

*岸茂樹(京大院・農・昆虫生態), 高倉耕一(大阪環科研・水), 西田隆義(京大院・農・昆虫生態)

息子への最適投資量と娘への最適投資量はほとんどの生物で異なっている。一般にオス間闘争は体サイズが大きいほど有利だから、大きいオスは複数のメスを獲得できる。一方メスの繁殖成功は自らの産卵数によって決まる。したがって小さいオスの繁殖成功はメス1個体の繁殖成功よりも小さいのに対し、大きいオスの繁殖成功はメスの繁殖成功よりも大きい。このとき親は娘に比べて体サイズの大きな息子を生産すべきだから息子への最適投資量は娘への最適投資量よりも大きいはずである。しかしながら多くの昆虫は性染色体によるランダムな性決定様式を採用しているために子の性に応じて投資量を調節できない。本研究では息子への最適投資量が娘よりも大きく、かつ子の性を予測できない生物の投資戦略を検証した。

糞直下に糞球を造成する食糞性コガネムシ類(以下フン虫)にはオス間闘争が知られており、オスにツノなどの二次性徴形質が発達する。XY型の性決定をするフン虫の親は子の性を区別することなく糞球を造成する。糞球は子の唯一のエサ資源であり将来の成虫体サイズを決定する。そのためフン虫は性的二型の程度は大きいにもかかわらず、体サイズの性的二型はほとんどみられない。本研究ではこれらの事実をもとに個体ベースモデルを作成した。親が投資時に子の性を判別できるときとできないときについてシミュレーションを行い、投資量の進化的動態を比較した。その結果、親は子の性を予測できないとき、息子と娘の最適値の平均ではなく、息子にも娘にも息子への最適投資量を与えることが進化的に安定な投資戦略であることが分かった。つまりオス間闘争があり、かつ親が生み分けできないとき親は娘に過剰な投資をすることを示唆する。

日本生態学会