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一般講演 P3-202

アミメアリにおける利己的社会寄生者の起源:突然変異が表現型にあたえる影響のモデル解析

*土畑重人(東大院・総合文化), 佐々木智基(琉大・農), 嶋田正和(東大院・総合文化), 辻和希(琉大・農)

社会的共同の進化は,近年の進化生物学において主要な問題のひとつである.社会性昆虫の一種アミメアリ Pristomyrmex punctatus は,コロニー内のすべての個体がコロニー労働と単為生殖による繁殖との双方を担う共同繁殖を行っているが,労働せず産卵に専従し,コロニー全体の適応度に負の影響をおよぼす利己的寄生系統が一部の地域集団から知られている.演者らは現在までに,利己的寄生者と共同繁殖者の個体群動態モデルを作成し,利己的寄生者の他コロニー侵入と極端に高い増殖率とが,メタ個体群レベルでの両者の共存をもたらすことを示した.この結果は実証データによっても裏付けられている.

本発表では従来のモデルを発展させ,突然変異を導入した場合の挙動についてのシミュレーション結果を報告する.一般に,社会寄生者は宿主種から同所的に種分化したという経験則(Emery’s rule)が存在する.モデルにおいては,共同繁殖者から突然変異によってさまざまな利己性パラメータを持った寄生者が生じると仮定し, 現在存続している極端な利己的寄生者が,どのような遺伝的基盤のもとに生じたかを検討した.発表ではさらに,理論的に推定された利己的寄生者の遺伝的基盤が,アミメアリにおいてどのような生物学的根拠を持っているかについても議論する.

日本生態学会