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一般講演 P3-208
群集生態学での競争理論は、多くの場合に単一の種が優占して他の種は絶滅してしまう。ところが、自然では、草原群落や朝刊帯群集など、非常に多くの種が共存して群集や群落を構成している。これらは、沢山の共存種からなら群落が一般的である。
とくに草原群落においては、多種の共存がもっとも普遍的に見られる。しかし、空間占有を含めたモデルでは、多種の共存は非常に難しい。これは、植物群落におけるモデリングに何か重要な要素が欠いている可能性を示唆している。そこで、草原群落のモデルにより、共存可能性を探索する。
本報告では、光や空間を取り合う空間的な競争関係にある草原群落において、簡単な格子モデルを用いて、その共存方法を探っていくことにする。空間的に競争関係にある個体群は、それぞれ相互作用がない場合は共存できない。そこで、隣接個体間の相互作用を考慮した場合を考え共存の可能性について探っていくことにした。この相互作用は、例えば、大きな植物による小さな植物の被陰や他感作用である。具体的には、数種の植物からなるモデル生態系を考え、それぞれが、種子分散・栄養繁殖をしているとする。そして、その数種についてそれぞれの相互作用を考え、共存が可能になるか計算機シミュレーションにより探索する。
シミュレーションによる解析の結果から、相互作用がない場合は、最終的にはどれか1種がのこり他の種はすべて絶滅してしまう。しかし、ある相互作用が存在する場合は、共存が可能になることが分かった。
発表ではいくつかのシミュレーションの結果を紹介する。そして、共存可能な相互作用について論ずる。また、その結果から、植物群落の共存・形成についてのモデリングの問題点も論ずる。