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一般講演 P3-211

西南日本に分布するササユリの蛇紋岩植物ジンリョウユリの系統分化

*川瀬大樹(京都大・理),林一彦(大阪学院大),湯本貴和(総合地久環境学研究所)

蛇紋岩という超塩基性特殊岩はMgや重金属イオンを多く含み、土壌の乾燥、崩壊しやすい性質から植物が生育しにくい環境である。しかしそこは蛇紋岩植物という植物が固有種、広域分布種の亜種、変種として生育し、種多様性のホットスポットでもある。

本研究は非蛇紋岩地帯における植物と近縁な系統関係をもつ蛇紋岩変型植物を対象として、各蛇紋岩地帯の植物が近隣の非蛇紋岩地帯の集団から分化したのか、あるいはその他の蛇紋岩地帯と共通の遺伝的組成をもっているかを明らかにするために分子系統解析を行い、蛇紋岩地帯における植物の系統分化について検証を行った。対象とした植物は日本の本州中部から北海道にかけて分布するキク科のミヤマアズマギク種内分類群と西南日本において広く分布するユリ科のササユリである。ミヤマアズマギク種内分類群は各蛇紋岩地帯に形態的に幅広い変異を持つ変種や亜種をもつ。一方でササユリは徳島の蛇紋岩地帯や三重県の蛇紋岩地帯において矮小化タイプの変種ジンリョウユリが知られている。これらの植物を対象として核DNAのITS, ETS領域の塩基配列を解析した。その結果ミヤマアズマギク分類群では18種類のITS(ETSを含めて)タイプが検出され、複数の蛇紋岩地帯に特有のタイプが分布し、地理的なクレードにまとまっていることが分った。一方で、ササユリは2種類のITSタイプが検出され、ITSによる蛇紋岩地帯と非蛇紋岩地帯との分布パターンに差は見られなかった。これらの分布パターンの違いは各植物系統の進化速度の違いや、氷河期の影響を受けた隔離などによる地史的背景が反映されている可能性と各蛇紋岩地帯における植物の平行進化の可能性が示唆された。

日本生態学会