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一般講演 P3-212

近縁種の密度は熱帯雨林樹木の死亡率に影響するか?

*伊東明,名波哲,山倉拓夫(大阪市大・院・理),大久保達弘(宇都宮大・農)

マレーシア、サラワク州の熱帯雨林樹木群集で同種密度依存的な死亡が生じていることを2006年の大会で発表した。今のところ同種密度依存的な死亡のメカニズムは明らかでないが、病気や捕食など種特異的な死亡要因が重要であると予測される。もし、こうした死亡要因が厳密に種特異的ではなく、近縁種にも作用するのであれば、近縁種の局所密度もまた死亡率を上げる効果をもっている可能性がある。そこで、52ha調査区の1997-2002の毎木データを用いて、個体の死亡率と近縁種密度の関係をロジスチック回帰で解析した。1)同種、2)同属(同種を除く)、3)同科(同属を除く)、4)異なる科の局所密度(いずれも20mx20mあたりの個体数)の4つを説明変数にした場合、同種と同属の高密度は死亡率を上げ、同科と異なる科の高密度は死亡率を下げることがわかった。対象とする個体のサイズを変えても結果はほぼ同じで、特に小さな個体(胸高直径4cm未満)では同種と同属の密度の負の影響が大きかった。この結果は、サラワクの熱帯雨林では、同種密度だけでなく同属密度にも依存した死亡が起きていることを支持する。こうした「近縁種密度依存的な死亡」は、系統的により離れた種の同所的な分布を助長するため、熱帯雨林の種多様性維持に貢献すると同時に近縁種間の分布の分離を促進すると考えられる。

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