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一般講演 P3-213
小笠原諸島母島中央部の猪熊谷から石門にかけて、トレイル沿いに総延長約3.5km、幅2mのライントランセクトを設け、50m区間ごとに、林冠構成種の種名と株数を記録した。
出現する植物群落はシマホルトノキ−ウドノキ群集、モクタチバナ−テリハコブガシ群集、ワダンノキ群集、アカギ群落である。優占型ではモクタチバナ林が最も多い。群落高は1.5〜20mと変異に富む。
トランセクト内の林冠構成木は総数3673株、区間平均54.8株、出現種数は総計47種で、区間平均9.8種であった。多様性指数のH'は区間別0.34〜2.42、平均1.45となった。出現種は小笠原固有種・変種が36種と大半を占める。広分布種は8種、外来種はアカギ、シマグワ、ギンネムのみである。株数では、固有種・変種1309株、広分布種は2039株で殆どがモクタチバナである。外来種は325株でアカギの個体数が多い(297株)。
相関分析の結果、種数、H'ともに標高、群落高と負の相関(いずれもr<-0.5)があり、Gap数と正の相関(r>0.5)にある。標高の高い区間が主稜線沿いにあるため風衝攪乱を受けやすい点や、Gap数も攪乱の指標であることから、攪乱が種多様性の高さに係わっていることを示唆している。また、群落高と多様性の負の相関は、風衝低木林化が単位長あたりに多くの種を「詰め込む」ことを可能にしているためとも考えられる。
トランセクトを猪熊谷〜堺ヶ岳、堺ヶ岳〜石門山、石門に地形・人為影響等から区分した場合、林冠構成種の多様性は、風衝低木自然林が広がる堺ヶ岳〜石門山で最も高く(区間平均:14.6種、H'=2.01)、高木自然林が生育する石門がこれに次ぐ(8.3種、H'=1.37)。一方、人為影響が強い猪熊谷〜堺ヶ岳は種多様性が最も低い(4.6種、H'=0.93)。