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一般講演 P3-218
多様な在来の草原性植物から構成される半自然草地は、生活様式や生産構造の変化に伴い減少の一途をたどっている。従来の利用価値が失われた中で、半自然草地に典型的な植物相を適切に保全していくためには、今後、積極的に管理を行うべき対象となりうる群落とその分布状況を明確にする必要がある。しかし、特に減少の著しい平野部の農村地域に存在した半自然草地を対象とした研究は少なく、現存する草地群落の実態は明らかでない。そこで本研究では、関東地方東部の筑波・稲敷台地を対象として、現存する半自然草地の種組成を、過去のそれと比較し、群落の多様性や機能組成上の特徴を明らかにすることを目的とした。対象地における半自然草地の立地は、台地上の未利用地、谷津田沿いの刈取り斜面、刈取り管理の行われているアカマツ林の林床に分けられる。これら立地に成立した半自然草地を対象に植生調査を行い、1960〜70年代に関東地方の台地域で行われた植生調査データと合わせて解析を行った。
現在の植生データは、TWINSPANにより3グループに分類され、立地とほぼ対応していた。アカマツ林の林床や谷津田沿いの刈取り斜面に成立した群落の多様性は、過去の半自然草地植生以上に高く、機能組成の面では、過去の半自然草地植生と同様に花期が春・夏・秋のいずれかに限定された重力散布型や虫媒型などの多年生草本に特徴付けられていた。しかし、前者では木本が、後者では一,二年生草本が、過去の半自然草地植生に比べて有意に高く、外来種も多かった。また、DCAによる序列化の結果、アカマツ林床や谷津田沿いの刈取り斜面に成立した群落は、過去の半自然草地植生と質的に近いことが確認されたものの、小面積化や分断化により質的な劣化が進行していることも示唆された。