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一般講演 P3-220
ネジレバネ目(Strepsiptera)は各種昆虫類に広く寄生するパラサイトである。オスは羽化によって寄主を離れるが、メスは一部を除き完全な無翅・無脚のうじ虫状で、終生寄主を離れない。現在世界では9科約600種のネジレバネが確認されているが、その微小な体と、一般的に低い寄生率から、人の目にはなかなか触れる機会が無い。また、その生活史や生態は、ごく一部の種類で明らかにされているに過ぎない。判明しているこれらの寄主は、シミ目、カマキリ目、ゴキブリ目、バッタ目、カメムシ目、ハエ目、ハチ目であり34科にわたる。この多様な寄主をもつネジレバネ類の中で、最も注目すべきは、アリネジレバネ科であろう。アリネジレバネ科は全寄生性昆虫の中で唯一、雌雄異寄主性である。アリネジレバネ科のオスは寄主をアリ類とし、メスはキリギリスやバッタなどの直翅目を寄主とする。この雌雄異寄主性は寄生虫の進化を考えるうえで非常に興味深い。
アリネジレバネは、はたしてハチ目を寄主とするハチネジレバネ科に近いのか、それとも直翅目に寄生する種が確認されているクシヒゲネジレバネ科に近いのだろうか。そこで本研究では、基礎データとしてアリネジレバネ科の系統的な位置を明らかにするために、アリネジレバネ科に近縁とされているハチネジレバネ類(国内産9種)とエダヒゲネジレバネ(国内産1種)について、ミトコンドリアDNA、COI遺伝子を解析し、さらにGenbankより得られたアリネジレバネ類数種の同遺伝子部位の塩基配列をもちいて分子系統樹を作成し、アリネジレバネ科の起源について検討した。その結果、アリネジレバネ科は単系統群となり、ハチネジレバネ科系統の中に組み込まれた。また、最も近縁なハチネジレバネ分類群はアナバチ類に寄生するParaxenos属であった。