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一般講演 P3-221

湿生絶滅危惧植物のホットスポットとしてのハス田

*高見雄太(徳島大・院・工),原田悦子(徳島大・院・工),中村俊之(有限会社ウェットランド研究所),鎌田磨人(徳島大・工・院)

湿地には多様な動植物が生息し、独特の生態系が形成されている。我が国の湿地は、人為の影響により減少や環境の変化が進行してきたため、各地で保全を求める要請が高まっている。本研究は鳴門市大津町周辺に広がるハス田地帯、約245haを調査対象地とし、ハス田が持つ湿生植物のハビタットとしての機能を明らかにし、湿地としてのハス田の重要性を明らかにすることを目的とした。

徳島県のレンコン栽培地は吉野川北岸の三角州地帯に集中している。この地域は塩害が起こりやすいため、塩害に強いレンコンを栽培する農家が多いためである。旧吉野川北岸地帯に属し、周辺の三角州面よりもさらに低い湿地帯であり、堤防や排水設備がなければ自然の沼沢地となるような場所であることが、本調査地の地形的特徴である。

2006年の各季節にフロラ調査を行った結果、ミズアオイ、オオアブノメ、アズマツメクサ、チャボイなどの徳島県RDBに絶滅危惧2類以上で記載されている湿生植物が11種見つかった。これは、徳島県の湿生絶滅危惧植物の約10%にあたり、ハス田周辺の環境が湿生植物にとってホットスポットとしての機能を有していることが明らかとなった。

これらの湿生植物の分布要因を明らかにするため、土壌水分、土壌塩分、用水路の水位変動などの環境調査を行った。50地点以上のハス田・畦から土壌を採集し、その塩分を測定した結果、全ての地点で土壌に含まれる塩分はごく微量であった。これより、土壌塩分の濃淡によるすみわけによってチャボイ、アズマツメクサなどの海浜生植物の分布が決っていないことが明らかとなった。ハビタットの構造、特に比高などの地形的に要因によって分布が決定していることが示唆された。

日本生態学会