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一般講演 P3-228
東南アジア熱帯雨林に生育するマカランガ属(Macaranga; 29種)はアリ植物と呼ばれ,幹の空洞内には絶対共生者であるアリ(Decamera; 11種)とカイガラムシ(Coccus; 22種)が居住している.アリは植物から栄養体・カイガラムシから甘露を餌として提供される.その見返りとして,アリは植物を外敵から防衛する.このアリとカイガラムシは植物に完全に依存しており,マカランガから離れて生存できない.今回我々はマカランガ−アリ−カイガラムシの分子系統解析からこの3者が「いつ共生関係を手に入れ,どのように多様化してきたか?」をカイガラムシを主役として明らかにする.
COI分子時計を用いてカイガラムシ−アリの分岐年代を比較したところ,両者の起源年代(約1000万年前)・マレー系統が分岐した年代(390-490万年前)がほぼ一致し,マカランガ−アリ−カイガラムシはそれぞれ,特定の分類群内で共生関係を継続しながら,同時期に多様化(共多様化)してきたことが示唆された.
核DNA分子系統樹を用いていカイガラムシ−マカランガの種特異性を検証したところ,マカランガ種の地域内多様性がより高いボルネオ島ではカイガラムシの種特異性は低いが,マレー半島内では寄主ごとにニッチ分化していた.これらのことから,カイガラムシ系統には複数回の寄主の再編および種特異化が局所的に起こっていることが示唆された.