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一般講演 P3-229

アリ寄生性チョウの遺伝分化とホストアリの遺伝的・化学的分化の地理的パターン

*島本晋也(信大院・工),毛利秀雄(東大),市野隆雄(信大・山岳研)

ゴマシジミ属(Maculinea)のチョウは,クシケアリ属(Myrmica)のアリの巣の中に寄生する特異な生態をもっている.日本産ゴマシジミMaculinea teleiusは,3令幼虫まで食草であるワレモコウの花穂を食べて成長し,4令幼虫になると食草から降下する.そして,シワクシケアリMyrmica kotokuiによってアリの巣に運ばれ,アリ幼虫を食べて成虫になる.

最新の研究によって,日本産ゴマシジミのmtDNA系統は,東日本型と西日本型に分かれ,また,成虫の体表面炭化水素(CHC)も東西型に分かれることがわかってきた(Mouri et al. 2006).本研究では,このようなゴマシジミの遺伝的・化学的分化が,ホストアリのCHC分化の影響を受けておこった,という仮説をたてた.

上記の仮説を検証するため,ゴマシジミの生息地を中心に日本全国からシワクシケアリを採集し,mtDNA系統樹とCHCデンドログラムを作成した.これらの結果に基づき1)クシケアリ属の遺伝的分化と化学的分化のパターンが一致するか?,2)アリにおける遺伝的・化学的分化が,チョウの分化へ影響したのか?,を議論する.

日本生態学会