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一般講演 P3-231

環境情報地図を用いたゲンジボタルの生息環境評価

*高橋俊守(宇都宮大・農),加藤和弘(東大院・農),一ノ瀬友博(兵庫県大・自然研),大澤啓志(慶応大・総合政策), 杉村尚(自然研)

ゲンジボタル(Luciola cruciata)は、初夏の風物詩として日本人に最も親しまれてきた生物の一つである。しかし近年では、開発事業や圃場整備による生息地の改変、耕作放棄に伴う生息地の質的な変化等によって、個体数の減少が各地で報告されている。

ゲンジボタルの生活史は、水際の卵期、細流中の幼虫期、土中の蛹期、隣接する森林や草地で活動する成虫期に分けることができる。多様な生息地を必要とすることから、ゲンジボタルはしばしば良好な環境を指標する生物とされ、保護や復元のシンボルとしても扱われてきた。このため、ゲンジボタル生息地の環境条件について多くの研究が実施され、生息に必要とする物理化学的な環境構成要素についても明らかにされてきた。しかし一方で、生息地をとりまくより広域的な環境とゲンジボタルの分布との関係については研究成果が乏しい。

本研究は、東京大学と宇都宮大学によって栃木県市貝町のおよそ50箇所で5年間に渡って実施された、ゲンジボタル成虫の個体数調査をもとに、成虫の個体数と生息地の空間的な分布との対応関係を明らかにすることを目的とした。このため、新たに作成した縮尺5千分の1程度の環境情報地図(筆者らが研究開発中P3-230要旨参照)、既存の縮尺2万5千分の1現存植生図、土地条件図、衛星画像等の複数のスケールで作成された、生息地をとりまく環境情報の空間データを用意し、ゲンジボタル成虫の個体数との対応関係について比較検討した。なお本研究は、生息地の情報を記述した環境情報地図が、実際に生物の分布をどの程度説明することができるか、ゲンジボタルを事例として検証しようとするものである。

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