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一般講演 P3-232
モンゴル草原の多くは広い面積にわたって限られたイネ科が優占する比較的均質な群落である。この中で、大型げっ歯類であるシベリアマーモット(Marmota sibirica)は地中に穴を掘り、土砂をかきだしてマウンドを形成するため、このマウンドの周辺には異質な群落が形成されている。
ところで、マーモットの行動は保護区の内外で違いがあり、保護区内では巣穴を中心にかなり広く活動するが、保護区外では狩猟など危険性があるため、巣穴付近に限定される。このため、巣穴周辺の群落にも違いがあることが予想される。
そこで、このことを検証するために、モンゴルのフスタイ国立公園の内外においてマーモットの活動痕跡と巣穴周辺の群落を調べた。マーモットの糞は、園外では巣穴付近に集中していたのに対して、園内では、糞が広域に分散していた。また、撹乱を受けていない群落とマウンド周辺との植生の類似度指数(Morisita‘C)は、園外の方が低く(園内 ‘C=0.81、園外‘C= 0.69)、特にマウンド上では園外で0.85であったのに対し、 園内では0.37と大きな違いがあった。総出現種数も園内では18種類であったのに対して、園外では31であった。また、園内ではStipaが優占していたのに対し、園外ではStipaだけでなく、Artemisia glaucaや Chenopodium album の被度も高かった。このように、マーモットは撹乱の空間パターンを介して空間的異質性の創出に影響を与えていた