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一般講演 P3-233
元来の生息地を置き換えて生息地の消失・分断化をもたらすマトリックスは,従来生物にとって不適な場所だととらえられてきた。しかし,マトリックスへの親和性は種によって大きく異なり,マトリックスへの親和性の低い種は生息地の消失・分断化に負の影響を受ける一方,親和性の高い種は逆に正の影響を受ける。つまり,マトリックスへの親和性は,生息地の消失・分断化への種の反応に大きな影響を及ぼす。したがって,マトリックスへの親和性と結びつきの強い生態学的特性を明らかにすることができれば,生息地の消失・分断化により影響を受ける種の予測に役立つと考えられる。そこで,カラマツ人工林(マトリックス)によって落葉広葉樹林(生息地)が置き換えられている長野県中部の山麓地帯で鳥類調査を行ない,生息地における出現頻度に対するマトリックスにおける出現頻度の比をマトリックスへの親和性とし,マトリックスへの親和性と5つの生態学的特性(繁殖力,体重,渡り特性,採食場所の高さ,営巣場所の高さ)との関連性を検討した。解析では,種間の近縁度を考慮した。その結果,繁殖力が高く,渡りを行なわず,営巣場所の低い種がマトリックスへの高い親和性を示した。これから,繁殖力が低く,渡りを行ない,営巣場所の高い種はマトリックスへの親和性が低く,生息地の消失・分断化の影響を受けやすいことが示唆された。