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一般講演 P3-236

兵庫県におけるオオサンショウウオの分布と生息適地の推定

*田口勇輝(大阪府立大・生命環境科学), 三橋弘宗(兵庫県立人と自然の博物館), 夏原由博(京都大学・地球環境学堂)

オオサンショウウオの保全には2つの課題がある.一つは,現状の対策が河川改修に伴う個体の緊急避難や人工巣穴の設置など事後的な対処に限られていることだ.もう一つは,個体群が繁殖を続けているかどうかの直接的な確認が困難なことである.卵塊や幼生は数が少ないため発見が難しい.そして,本種の寿命は長く成体の確認からだけでは繁殖の有無を判断できない.このことから,現在成体が発見されている地域においても,突然絶滅する恐れがある.しかし,個体を識別して移動を追跡するような,これまでの調査方法では,これらの課題を解決するために膨大な労力を費やす必要があり現実的でない.そこで,本研究では,兵庫県において広域的なスケールから生息適地を推定し,保護地域を指定する.広域的な評価を行うことで,効果的な保全対策を行うことができる.

分布情報は,兵庫県全域を対象として収集し,各種団体から聞き取り調査を行った結果,現在421箇所の発見情報を整理できた.データの解析は,一般化加法モデルを用い,目的変数(本種の分布状況)に応じて最も適合する説明変数(物理環境)を推定する.本種の分布を規定する生態的な特徴としては,主に繁殖期前に見られる遡上と,普段の生息場所の選定が考えられる.このため,目的変数の候補は,遡上に対応するものとして堰堤の位置や規模,河床勾配など河川内の物理環境を,生息場所に対応するものとして河川の蛇行状態,河畔林の有無など河川周辺の物理環境を取り上げて解析を行う予定である.過去に生息が確認された場所において生息適地を推定するとともに,かつては生息したが現在では確認されなくなった場所において生息を妨げる要因を検出し,繁殖の継続性が危ぶまれる地域の特定を行う.また,それらを地図化することで保全計画への適用を試みる.

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