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一般講演 P3-237
陸域の炭素・水・エネルギーの循環におけるシベリアのカラマツ林の役割を詳細に把握するためには,カラマツ樹冠の葉面積を,その季節変化を含めて広域かつ正確にモニタリングする必要がある。特に,落葉性の針葉樹であるカラマツの場合には,その展葉時期の変化が年間炭素吸収量に影響を及ぼす可能性があるため,その評価は重要である。
一方,現時点で利用可能な衛星データによる広域の葉面積データは,ヨーロッパやカナダの寒帯林を想定して開発されたアルゴリズムで推定されており,カラマツの葉面積分布を正確に再現しきれていない。これはカラマツの樹木構造や針葉の光学的な性質が,常緑針葉樹とは異なるためである。
こうした背景を踏まえ,東シベリアに広がるカラマツ樹冠の葉面積を衛星観測値から評価する方法について検討を行った。利用データとして,SPOT/VEGETATIONのS10データを用いた。S10データには,可視域から短波長赤外までの計4チャンネルで観測された地表面の反射率情報が含まれており,この中で近赤外領域と短波長赤外の2つのチャンネルの比演算処理で算出される植生指標(NDWI)を用いた。
葉面積の推定は以下の方法で行った,まずNDWIの季節変化からDelbert et al. (2005)の手法を用いて春先の展葉開始日を推定し,その後の樹冠の葉面積の増加を展葉開始日と当該日のNDWIの差(dNDWI)から算出した。推定した葉面積は,シベリアのヤクーツク近郊のカラマツ林において魚眼デジタルカメラを用いて光学的な方法で現場測定した葉面積データと比較を行い,その精度の評価を行った。