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一般講演 P3-239
河川生態系は、一般的に上流から下流へと重力に沿った水の流れによって、連続的に物理環境が変化する系である。流量や河床材料はもちろん、水温や水質についても流域の規模と関連する場合が多い。しかし、厳密にみると河川の流域規模は、連続的に変化するわけでなく、河川の合流点において急激に変化する。例えば、下流部でも急峻な渓流が合流していた場合には、大きな石礫や冷涼な湧水が存在する。つまり、河川が合流することによって、多様な生息場がスポット的に形成され、流呈に沿った長い区間にわたって、多様な生息場がモザイク状に成立している可能性がある。その結果、本来は上流域だけに生息可能な種が「合流点」があることで、本来の生息可能域が拡張され、種の絶滅リスクが軽減し、多様性を向上させている可能性がある。我々は、この機構を「合流点の法則」と称し、複数の流域にわたる広域的な調査資料をもとに、仮説の検証を行った。
今回の検証においては、兵庫県加古川水系を対象とし、植物群落の多様性について解析を行った。植物群落は種の分布とは異なり、生息場の状況を指標し、生息場所の多様性を評価する上で適切な指標になると考えられる。具体的には、既存の植生図(兵庫県 2006)を活用し、加古川水系の河川をすべて500m単位のユニットに分割し、それぞれで植生群落数を計数した群落数を従属変数として、独立変数としての物理環境要因(勾配、合流点、人為改変など)との関連を階層ベイズモデルによって検討した。その結果、河川の合流点では単線に比べて多様な植生群落が成立し、概ね仮説が支持された。以上の結果から合流点は、治水の難所として改変されやすい場でもあるが、生物多様性の維持にも重要な役割も持つ可能性が示唆された。